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海洋深層水の定義

 海水資源の利用という観点から、また海洋生態学的な視点から「光合成による有機物生産よりも微生物による有機物分解が大きく、かつ海水の上下混合や人間活動の影響が少ない、補償深度より深いところの資源性の高い海洋水」と定義づけられています(中島敏光:1988年、2002年)。
 ここで「補償深度」とは、海の植物が光合成を営むために必要な光の強さが届く深さのことです。
 補償深度は海面照度の1%となる水深とほぼ一致しており、海洋生態学の分野では補償深度より浅い層を「有光層」(真光層ともいいます)、そして補償深度より深い層を「薄光層」や「無光層」として鉛直的に区分されます。
 有光層の海水、いわゆる表層水では植物プランクトンや海藻などの光合成植物が窒素・リン・炭素などの無機栄養物を利用して、蛋白質・脂質・炭水化物などの粒状態や溶存態のいろいろな有機物を生産しています。一方、薄光層や無光層の海水、いわゆる海洋深層水では植物による有機物が生産されず、上層から沈降あるいは移流・拡散により運ばれてきたこれらの有機物はバクテリアにより分解され、無機化されていきます。そのために、有光層は「生産層」、そして薄光層や無光層は「分解層」とも呼ばれています。この薄光層や無光層の海水、すなわち補償深度より深いところの海水が海水資源利用を意図している「海洋深層水」です。
 通常、補償深度より浅い層の海水である「海洋表層水」に比べて、補償深度以深の海水から無機の栄養塩類(硝酸塩、リン酸塩、珪酸塩等)の濃度は深さとともに増加し、より清浄な海水となってきます。そして相対的に水温は低くなり、物理、化学および生物学的な海水の水質変化も小さくなって水質は安定してきます。いわゆる資源としての富栄養性、清浄性、低水温性、水質安定性等の諸特性が生成されだします。
 中島らは、海洋調査、海水分析、生物検定等を通して、補償深度の「約2〜3倍」の深さから資源性の高い清浄で植物栄養に富む「海洋深層水」が分布(海域や季節によりその分布水深は違う)することを経験則として明らかにしました。これらを踏まえて、海水資源の利用という観点から上記の資源性の高い海水を「海洋深層水」と定義づけました(中島・豊田:1979年、中島:1988年、中島:2002年)。
 目的によって、利用する「海洋深層水」の特性は異なり、また対象海域でのその分布水深にも違いもあるので、どの深さからが「海洋深層水」と特定できません。現在、水深200mより深い海水が利用対象(利用目的によってはさらに浅い水深の海水も「海洋深層水」として利用できる)となっており、地球表面積の71%を占める海の平均の深さは3800mなので、海洋深層水の量は総海水量の95%を占めるということができます。

参考文献
中島敏光・豊田孝義(1979年):海洋深層水利用による海域の肥沃化.海洋科学技術センター試験研究報、第3号、117−125頁.
中島敏光(1988年):海産珪藻の増殖に及ぼす海洋深層水の影響. 日本プランクトン学会誌、35巻、1号、45−55頁.
中島敏光(2002年):「21世紀の循環型資源・海洋深層水の利用」、緑書房、44−45頁.
中島敏光(2002年):「21世紀の循環型資源・海洋深層水の利用」、緑書房、78頁.