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海洋深層水の研究開発 DOWAとOTEC

 海洋深層水を利用する技術には、その目的と研究開発の流れから「海洋深層水利用技術(Deep Ocean Water Application :DOWA/ドーワと略称)」と「海洋温度差発電技術(Ocean Thermal Energy Conversion :OTEC/オテックと略称)」の2つに大きく分けられます。
 海洋深層水利用技術は、海洋深層水を資源としてとらえ、その多様な資源性を利・活用することを目的としています。一方、海洋温度差発電技術は、表層の暖かい海水と深層の冷たい海水の温度差により発電することを目的としています。いずれも海洋深層水を利用する点では同じですが、目的が異なるために、研究アプローチ、海洋深層水の取水場所や取水深度などの立地条件、取水規模などに大きな違いがあります。海洋深層水利用技術は、海洋温度差発電技術に比べて、利用対象の海域は広く、また海洋深層水の取水深度も浅く、取水規模も小規模です。
 海洋深層水利用技術の研究は、1967年にアメリカ人ジェラードとウォーツェルが海洋深層水の資源性に注目して以来、1970年代に入り、アメリカ人ローエルらによって研究開発が進みましたが1980年以降は進展していません。わが国では1976年に中島と豊田がその資源性に注目し、海洋深層水利用の技術体系化をめざした研究開発をすすめ、陸上型海洋深層水利用技術の一部は実用化段階に達しています。現在、全国の陸上型海洋深層水取水施設は16か所に整備されており、北海道から沖縄、日本海側から太平洋側の沿岸各地に存在しています。そして海洋深層水の利用は水産分野をはじめとして、農業分野、エネルギー分野、海水淡水化分野、製品分野、健康増進・医療分野など、多様化・深化しながらその応用分野が広がっています。わが国の海洋深層水利用は最も先行しているということができ、海洋深層水ビジネスとして、地域振興の基幹技術としても期待されており、また、韓国、台湾などをはじめとする近隣のアジア諸国からも注目されています。
 一方、海洋温度差発電技術の研究は、1881年のフランス人ダルソンバール氏が提唱した温度差により発電するというアイデアに遡ります。そして1926年にフランス人クロードらが小さな実験装置によりその可能性を証明し、1930年に実海域実験で22キロワットの発電に初めて成功しました。海洋温度差発電技術は、発電のための一定の温度差(現在の熱交換技術では15℃以上の温度差)と大量の海水を確保する必要があります。そのために、温度差が大きい熱帯海域が対象海域となり、また海洋深層水の取水深度も深く、取水規模も大規模です。海洋温度差発電技術は低密度の海洋温度差エネルギーを利用し、大規模取水となるがゆえに、開発すべき課題も多く、また火力発電、原子力発電などの他の競合技術との発電コスト等の問題もあり、実用化の見込みが未だ得られていません。120年以上の研究開発の歴史をもつ海洋温度差発電技術の研究開発は停滞ぎみであるのが現状です。

参考文献
中島敏光・豊田孝義(1979年):海洋深層水利用による海域の肥沃化.海洋科学技術センター試験研究報、第3号、117−125頁.
本間琢也、梶川武信、谷辰夫(1979年):「エネルギーをつかむ−明日の人類のために−」、講談社.
中島敏光(2002年):「21世紀の循環型資源・海洋深層水の利用」、緑書房、95−105頁.
Gerard, R.D. & J.L. Worzel(1967年):Condensation of atomospheric moisture from tropical maritime air masses as a fresh water resource. Science、157、1300−1302頁.
Roels, O.A.、J.S. Baab、G.L. Hamm & K.C. Haines(1973年):Mariculture in an artifical upwelling System. Offshore technol. Conf.、preprint OTC-1764、1391−1395頁.